第34章

藤野拓介は、金に目がくらんだ彼女の様子を見て、眼差しの冷たさをいくらか和らげたものの、依然として不機嫌そうな顔つきだった。

彼はポケットから別の物を取り出し、放り投げる。

椎名水緒は慌ててそれを受け止めた。目を凝らすと、シンプルながらも質感の極めて高い黒い名刺だ。そこには金箔押しの『S』という文字と、個人の連絡先らしき番号だけが記されている。

「柏木奏先生のプライベートの連絡先!?」椎名水緒は目を丸くし、驚きのあまり声が裏返った。「嘘、マジで? 叔父さん、これどこで手に入れたの?」

柏木奏といえば、世界最高峰のジュエリーデザイナーだ。神出鬼没で、個人のオーダーなど決して受けない、彼女...

ログインして続きを読む