第38章

千鳥凪紗は会社を飛び出した後、荒立つ呼吸を無理やり整えた。こういう時こそ、自ら陣形を乱してはならない。

高村部長と梅原月はグルだ。社内で助けを求めるなど、自ら虎の口に飛び込むようなものだ。

彼女は深く息を吸い込み、踵を返して早足でオフィスビルを出ると、階下のカフェに入って席に着いた。そして、迷わずクライアントである山口社長のプライベート携帯に発信した。

これは以前、連絡の便宜を図るために個人的に聞いておいた番号だ。

コール音は長く続き、ようやく繋がったかと思うと、受話器の向こうから山口社長の極めて不機嫌な声が響いた。

「どちら様だ?」

「山口社長、お世話になっております。デザイナ...

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