第54章

古びた団地の下に停車した黒塗りの車は、周囲の景色とはあまりに不釣り合いで、道行く人々の視線を集めていた。

千鳥凪紗は抱えていた木箱を抱き直し、車内の梅原徳海に礼を言うと、車を降りた。

階段を上ろうとした矢先、ポケットの中のスマートフォンがけたたましく鳴り響く。

見知らぬ番号だった。

千鳥凪紗が眉をひそめつつ通話ボタンを押すと、受話器の向こうから、中年男の尋常ではない焦った声が聞こえてきた。

「柚木文乃さんの保護者の方でしょうか? 今すぐ学校に来ていただけますか?」

千鳥凪紗の心臓が早鐘を打つ。

「彼女に何か?」

「いえ、まずは落ち着いてこちらへ……詳しいことはお会いしてから」...

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