第55章

校長室を出てからというもの、柚木文乃は千鳥凪紗の背中にピタリと張りつくようにして歩いていた。悪戯が見つかった子供のように俯き、足取りは重い。

千鳥凪紗は一言も発さず、早足で進んでいく。文乃は小走りでなければ追いつけないほどだ。

キャンパスの隅にある人目のつかないベンチのそばまで来て、凪紗はようやく足を止めた。

くるりと振り返ると、文乃の手首に残る淡い赤色の痕を、その涼やかな瞳で射抜くように見つめる。

「いつから?」

抑えきれない怒りが、その声の端々に滲んでいた。

射竦められた文乃はビクリと身を震わせ、咄嗟に手を背中へ隠した。唇がわなわなと震えるばかりで、言葉が出てこない。

「聞...

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