第63章

彼はあえて騒ぎを起こそうとしていた。自分が庇護する人間に手を出せばどうなるか、藤野家の連中に思い知らせるために。

椎名水緒はその意図を即座に汲み取り、それ以上口を開かなかった。

その時、檜山元司が沈着な声で割って入った。

「ただいま情報が入りました」

彼はタブレットを差し出す。画面には煌びやかな会員制クラブの入り口が映し出されていた。

「藤野怜平が今夜、ここで海外との商談を行うようです。警備は厳重、取引内容はかなり黒いとの噂です」

藤野怜平は藤野拓介の従兄であり、家内で彼と対立する筆頭格だ。

藤野拓介はタブレットを受け取り、盗撮された数枚の写真を指先でスワイプする。その暗く沈ん...

ログインして続きを読む