第68章

メッセージを送信し終えると、千鳥凪紗はようやく人心地ついた。

不本意な滞在ではあるが、藤野拓介に一報入れたことで、荒れ狂う海原で停泊するための錨を見つけたような安心感を覚える。これなら、そこまで取り乱さずに済みそうだ。

すぐに携帯が震えた。藤野拓介からの返信だ。たった一言、『おやすみ』とある。

何の変哲もない挨拶なのに、凪紗には画面越しに彼の静穏で優しい眼差しが見えるようだった。思わず口元が緩む。携帯を枕元に置くと、軟禁状態にあることへの鬱憤や苛立ちも、その大半が霧散していた。

客間のベッドは柔らかく、布団からは陽の光のような爽やかな匂いがした。

一晩中駆け回ったせいで、精神も肉体...

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