第77章

しかし千鳥凪紗は今、心が乱れていて、とてもじゃないがそんな職場の馴れ合いに応じる気分ではなかった。漂ってくるスイーツの甘い香りに、吐き気すら覚えるほどだ。

「結構です」

彼女はそっけなく断ると、相手を避けて自分のオフィスへ戻ろうとした。

松下佑奈の笑顔が一瞬引きつったが、すぐにまた元の表情を取り戻す。彼女はめげずに二歩追いかけてきた。

「千鳥さん、せっかく皆で盛り上がってるんですから。新人の私を歓迎すると思って、顔を立ててくださいよ」

その声は大きくもなく小さくもなく、周囲の同僚たちの耳にちょうど届く音量だった。

一瞬にして、いくつかの視線がそれとなく漂ってきた。

千鳥凪紗は足...

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