第78章

椎名水緒がそのスープをどう処理すべきか頭を悩ませていた、その時だった。

藤野拓介が猛然とベッドから起き上がり、獲物を護る野獣のような素早さで保温容器を奪い取ると、それをしっかりと胸に抱え込んだ。

「俺のだ」

彼は羽菜を睨みつけ、独占欲を露わにして言い放つ。

その剣幕に羽菜は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに唇を尖らせた。彼女は子供ながらに鋭い観察眼を持っており、藤野拓介の威嚇がただの虚勢であることを見抜いていたのだ。

羽菜は彼の周りを二周ほど回ると、ふと足を止め、小さな顔を上げて大人びた口調で断言した。

「おじさん、恋の悩みがあるでしょ」

藤野拓介の動きが凍りついた。幻聴かと思っ...

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