第80章

言い終わるや否や、男は千鳥凪紗の返事も待たずにアクセルを踏み込んだ。

千鳥凪紗は砂煙を上げて去っていくテールランプを見送りながら、その唇に珍しく淡い笑みを浮かべた。

アパートに戻ると、柚木文乃はまだ衝撃から立ち直れずに呆然としていたが、辰樹はすでに我が物顔で浴室へと駆け込み、身支度を始めていた。

凪紗が辰樹の髪を乾かし、抱き上げてリビングに戻ると、すでにパジャマに着替えた文乃が近寄ってきた。彼女は親しげに凪紗の腕に絡みつき、甘えた声を出す。

「お姉ちゃん、今夜は一緒に寝てもいい? 話したいことが山ほどあるの」

その言葉を聞いた途端、凪紗の腕の中でおとなしくしていた辰樹が反旗を翻した...

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