第82章

いつの間にか辰樹がドアを押し開けて入ってきていた。目をこすりながら、心細げに口を開きかける。だが、ドア際で密着する二人の姿を認めた瞬間、その表情にあった寂しさは瞬時に警戒心へと塗り替えられた。

彼は小走りで駆け寄ると、小さな両手をいっぱいに広げ、まるで宝物を守り抜く雌鶏のように千鳥凪紗の前に立ちはだかった。そして頭をぐっと持ち上げ、仮面をつけた謎の男を厳しい目つきで睨みつける。

「おばさんをいじめるな!」

藤野蓮司は動きを止め、足元に湧いて出たようなその豆粒を見下ろすと、眉間に深い皺を刻んだ。

辰樹は怯むことなく彼と視線を交わした。この男がおばさんにとって脅威であると敏感に察知し、よ...

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