第9章

言葉が落ちると、空気が数秒間凍りついたようだった。

藤野拓介は差し出されたキャッシュカードを見つめたが、受け取ろうとはせず、瞳の奥にある面白がるような笑みをさらに深めた。

彼の低い声には、気づかないほど微かだが、しわがれた響きがあった。ゆっくりと彼女の言葉を繰り返す。

「責任?」

千鳥凪紗は彼に見つめられて背筋がゾクゾクしたが、強がって頷いた。

「そう、責任よ」

「いいだろう」

男は不意に軽く笑った。その笑い声は胸の奥から響く低く心地よいものだったが、千鳥凪紗の心臓を奇妙に締め付けた。

彼は一歩踏み出した。長身の影が一瞬で彼女を覆い、あのシダーウッドの香りが再び彼女を包み込む...

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