第96章

梅原慎一は千鳥凪紗に危険が迫っていると聞くや否や、バネ仕掛けのようにソファから飛び起きた。眠気など一瞬で吹き飛んでいた。

これは辰樹にいいところを見せる絶好のチャンスだ! 彼はすぐさま胸を叩いて請け合った。「安心しろ! 俺に任せておけば大丈夫だ、確実にな! おばさんを必ず無事に連れ戻してやる!」

通話を切り、辰樹は窓の外を飛ぶように過ぎ去る夜景を見つめながら、小さな拳を固く握りしめた。

おばさん、あなたは一人じゃない。

……

午後十時五十分、西の郊外にある廃工場。

錆びついたコンテナの陰で、千鳥愛梨は分厚い札束をチンピラ風の男の手に押し付けていた。男の名は上村大樹。かつて彼女たち...

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