第97章

凄まじい恐怖が彼女を支配した。暗闇の中で死に物狂いで抵抗するも、相手はびくともしない。

黒服の男は一言も発さず、恐ろしいほどの怪力で、たった片手で彼女の抵抗をねじ伏せると、音もなく廃工場の奥へと引きずり込んでいった。

それから間もなく、一台の派手なフェラーリが少し離れた場所に停まり、ヘッドライトが素早く二度パッシングした。

梅原慎一が車から飛び降りてくる。その表情には緊張と、どこか手柄を誇るような興奮が混じっていた。彼は千鳥凪紗の前まで駆け寄ると、頭のてっぺんからつま先までじろじろと確認した。

「大丈夫か? 俺……たまたま通りかかってさ、君が一人でこんなところにいるのは危ないと思って...

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