第1章

ポツ、ポツ、ポツ……。ちくしょう、また天井が雨漏りしている。悪夢から飛び起きた私の心臓は激しく脈打ち、背中は冷や汗でぐっしょりと濡れていた。無意識に左手首を掴むと、袖の下に隠されたでこぼこな傷跡に指先が触れた。

『もう何年経った、絵里? あんたはまだ、あの記憶から逃れられない』

B市の初冬はとりわけ厳しく、私のアパートの暖房システムが発するのは、実際の暖かさのかけらもない、金属が軋むような音だけだった。重い体を引きずって洗面所へ向かい、鏡に映る自分の姿――窪んだ目、青白い顔、生気のない眼差し――に顔をしかめる。

「クソッ」

そう呟き、オレンジ色の処方薬の瓶を振る。中でたった二錠の錠剤が立てる、空っぽで乾いた音が響いた。その一錠を、水もなしに喉の奥へと放り込む。錠剤が食道をこすりながら落ちていく不快感に、思わず顔をしかめる。次の処方箋が手に入るのは、十日も先のことだ。

その時だった。天井の黄ばんだ染みが突然裂け、近くに掛けてあった紺色のスーツ――私が持っている唯一まともな仕事着――めがけて、汚れた水が滝のように降り注いだ。

「最悪ッ!」

舌打ちと共に、汚い言葉が口をついて出た。もはや、これが私の日常だ。五年前に父が刑務所に収監され、〝水原家〟の全てが差し押さえられてから、人生は坂道を転がり落ちるだけ。あの屋敷から、ネズミの這い出る安アパートへ。お抱え運転手のいた生活から、凍える雪の中をひたすら歩く毎日へ。まるで終わりのない罰のように、日々、新たな一撃が私を打ちのめす。

深呼吸をしてから、ずぶ濡れになった服の後始末を始め、予備の黒いレギンスと赤いタートルネックのセーターを引っ張り出した。仕事着としてはふさわしくないが、少なくとも乾いてはいる。

『しっかりしろ、絵里。地獄に落ちてからもう五年だ。今日も、いつもと同じ一日にすぎない』

ロビーでは、白佐さんがキーキー音を立てるショッピングカートを押して出口に向かっていた。

「おはよう、絵里!」彼女は私に手を振り、顔中の皺をくしゃくしゃに寄せる。「よく眠れた? 無理よね、ひどい顔してるわよ」

「まあ、それなりには」私は無理に笑みを作った。

カップを持つ手が止まり、彼女は窓の外を一瞥してから、身を乗り出した。潜められた声が、テーブルの向こうから届く。「昨夜、銃声を聞きました? 午前二時ごろです。乾いた音が三度……パーン、と。角を曲がった先の、あの廃スーパーの辺りから。また山口組の仕業でしょう。この街では、もう誰も驚きません」

その名が、氷の錐のように私の背骨を貫いた。身震いを必死にこらえる。「聞いてません。睡眠薬を飲んだので」

「あのクソ野郎ども」彼女は唾を吐き捨てるように言った。「でも、この辺も新しいオーナーがつくらしいわよ。港で働いてる友達が言ってたんだけど、星野家がこのシマを取り返しに戻ってくるって!」

心臓が跳ね、鍵が手から滑り落ちて、カチャンと鋭い音を立てて床に転がった。「星野?」私は急に青ざめた顔に気づかれないよう祈りながら、屈んで鍵を拾った。

「ええ、なんでも若い組長で、相当なやり手らしいわよ」彼女は肩をすくめた。「まあ、誰だっていいんだけどね。あたしたちみたいな下っ端には、どこの組だろうと、何か違いがあるわけでもないし」

私はさっと腕時計に目をやった。「もう行かないと。遅刻しちゃうので」

外には、雪が厚く積もっていた。私はマフラーを顔の半分まで引き上げ、公民館に向かって歩き出した。頭の中は、あの聞き覚えのある名字のことでいっぱいだった。

『馬鹿なこと考えないで、絵里。B市は広いんだから。そんな偶然、あるはずがない』

「人はそれぞれ自分のペースで進むものよ、恵子さん。焦らないで」

公民館の小さな会議室で、私はトラウマを抱える女性たちのための週例会の進行役を務めていた。円になって座っているのは、七人のDVサバイバーたちだ。ちょうど真理子さんが自分のトラウマの引き金について話し始めた時、ドアが開いた。

「お話中ごめんなさい」主任の奈央が顔をのぞかせた。「絵里さん、ちょっといいかしら?」

彼女の表情はこわばり、眼鏡は鼻の上で曲がっている――たいてい、何か問題が起きた時のしるしだ。私はグループに断ってから、ナンシーの後について廊下に出た。

「どうしたんですか?」私は尋ねた。

「星野不動産よ」彼女は声を低くした。「彼らがこの区画一帯を、このセンターも含めて買収したの」

『星野』。その名前が、再び私を打ちのめした。「新しいオーナーが今日の午後、視察に来るの」奈央は不安そうな顔で続けた。「これって、スタッフの再編成、最悪の場合は大量解雇もあり得るってことよ」

めまいがした。来週まで持たせなければならない抗うつ剤は二錠だけ。滞納した家賃。ずぶ濡れの仕事着。そして今度は、失業の可能性? 私の手は微かに震え始めた。仕事がなければ薬代が払えず、薬がなければ私は壊れてしまう……

「みんな、気を引き締めて、きちんとした格好でいてちょうだい」奈央は私の赤いセーターを非難するように一瞥した。「光の予備のブレザー、借りたらどう?」

私は頷いた。心臓がずしりと重くなる。

支援グループに戻っても、私は集中しようとしたが、真理子さんの言葉が深く胸に突き刺さった。

「特定の匂いなんです」彼女は震える声で言った。「特に、あのコロンの匂い。似たような香りを嗅ぐと、いつでもあの夜に戻ってしまう……」

突然、強いめまいに襲われた。会議室の照明がやけに眩しく、空気が薄く感じられ、肺が圧迫される。

『落ち着け、絵里。深呼吸。一、二、三、四、息を吐いて。あなたはプロなんだから』

「匂いの引き金は、最も一般的なトラウマ反応の一つです」私は感情を必死に抑えながら、なんとか言葉を紡いだ。「嗅覚は、感情を司る脳の領域に直接つながっていますから。対処法については、来週詳しくお話ししましょう」

真理子さんは首を傾げ、その視線が私を射抜いた。「まるで、ご自分が直接経験したみたいに話しますね」

私の指は無意識に腕時計の下の傷跡へと動いた。「専門的な訓練を受けただけです」

三時きっかりに、私たちはまるで処刑を待つ囚人のようにロビーに立っていた。奈央の黒いブレザーを借りたが、肩のあたりがぶかぶかで、それでも赤いセーターよりはフォーマルに見えた。

従業員たちは神経質に囁き合い、不安が空気に満ちていた。外では雪が止み、冬の淡い日差しが、まるで不吉な兆候のように、三台の黒光りするセダンに反射していた。

『落ち着け、絵里。新しいボスが来るだけ。世界の終わりじゃない』

ドアが開き、冷たい空気と雪片が舞い込んだ。

そして、私の世界は回転を止めた。『嘘でしょ! いや、いや、あり得ない!』

完璧に仕立てられたダークグレーのスーツを着て、星野和也が闊歩してきた。五年前よりもたくましく、顎のラインはよりシャープに、眼差しはより鋭くなっている。時間は彼の端正な顔にほとんど痕跡を残さず、むしろ威圧感を増していた。

六人のボディガードがすぐ後ろに続き、その訓練された目は隅々までを鋭く見回し、イヤホンからは時折、ひそやかなメッセージが流れている。この側近たち、この存在感、かつて父の周りで同じ光景を目にしていた私には、あまりにも馴染み深いものだった。

和也の視線が部屋をゆっくりと見渡し、ついに私の上で固定された時、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。彼の表情は驚きから困惑へと変わり、最終的に冷たく硬いものへと落ち着いた。

私は無意識に後ずさり、足が後ろの椅子にぶつかってガタンと大きな音を立てた。皆が私の方を振り返ったが、私の目には和也しか映っていなかった。

「星野さん! B市南区コミュニティセンターへようこそ!」奈央が熱心に近づいた。「チームを紹介させてください。こちらは絵里、私たちのトラウマ回復専門の......」

「水原」和也は冷たく遮った。その声は低く、危険な響きを帯びていた。「水原絵里」

部屋は死んだように静まり返った。B市において、水原という名前が何を意味するかは、たとえその一族が歴史の中に消えたとほとんどの人が信じていても、周知の事実だった。

「星野......さん」私はかろうじて言葉を絞り出した。

和也の唇が、どこか他人行儀な笑みを形作った。「久しぶりだな、絵里。運命ってのは……面白いもんだな」

私は血の気が引いていくのを感じながら、そこに立ち尽くしていた。十年前のあの雨の夜の記憶が、津波のように押し寄せる。一つの考えが頭の中で響き渡った。

『なんてこと、これは一体どんな悪趣味な冗談なの? 私の元カレ、私が無慈悲に捨てた男が、今や私の新しいボスですって?!』

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