第2章

公民館の会議室は凍えるように寒かった。外ではまた雪が降り始め、窓ガラスをこつこつと叩いている。氷のように冷たい指先をこすり合わせながら、私は必死に集中しようとした。

磨き上げられた会議テーブルが、私たちと彼らの世界を分断していた。テーブルの向こう側、上座を占めるのは和也の経営陣。三人の男たちは寸分の隙もないスーツに身を包み、表情を消している。紅玉のように赤いネイルの秘書だけが、唯一の色彩だった。そしてこちら側――壁際に並ばされた私たち従業員は、ただ息を潜めるしかない。同僚たちの視線は、決して私と合おうとはせず、それでいて恐怖と好奇心に濡れて、私の横顔に突き刺さっていた。

「我々の業務効率評価によれば」金縁眼鏡をかけた中年の男が言った。「水原絵里は資料部へ異動。過去の文書整理を担当してもらう。給与は現行の五十パーセントに調整。本日付けで発効とする」

五十ですって!? 部屋中にすぐさまひそひそ話が広がった。私はその場に立ち尽くす。頬が燃えるように熱く、耳鳴りがした。

「これは私怨です」歯を食いしばりながら、私は言った。「私の業務成績とは何の関係もありません」

会議室は一瞬で静まり返り、誰もが息を呑んだ。

部屋の隅から、和也が姿を現した。その唇には冷たい笑みが浮かんでいる。

「これは経営判断だ、水原さん」彼は私に向かって歩きながら言った。「純粋に、効率と利益に基づいたものだよ」

彼はぐっと身を乗り出し、私の耳元で熱い息を吐きかけた。「忘れるなよ。お前はもう、手の届かない、特別なお姫様じゃないんだ」

目の奥がじんと熱くなるのを感じた。塊が胸から喉へとせり上がってくる。

(くそっ! 泣くな、私!)

「会議は終了だ」和也が突然、声を張り上げた。「全員、持ち場に戻れ。絵里、お前の新しいオフィスは地下だ。白佐さんが案内する」

資料室は薄暗く、じめっとしていた。黴の匂いが古い紙の香りに入り混じっている。蛍光灯は絶え間なくちらつき、頭痛を誘うような不快な羽音を立てていた。埃をかぶったファイルボックスと、錆びついたスチールキャビネットが所狭しと積み上げられている。

私は機械的に黄ばんだ書類をめくった。指先は埃まみれだ。だが、思考は七年前へと飛んでいた。

水色のドレスを着て、私は水原家の夏のパーティーをこっそり抜け出した。父とその「ビジネスパートナー」たちが、葉巻の煙とウィスキーの匂いが充満する中で話している。偽りの笑顔と危険な眼差しにはもううんざりで、少しの間でも隠れる場所が欲しかったのだ。

台所だけが、唯一静かな場所だった。パーティーの喧騒はドアに遮られ、代わりに鍋やフライパンのぶつかる音と、食欲をそそる香りが満ちていた。

「危ないですよ」不意にかけられた声に、私はびくりとした。「厨房は、水原様のようなお嬢様がいらっしゃる場所じゃありません」

振り返ると、そこにいたのはハンサムな青年だった。少し癖のあるダークブラウンの髪に、青い瞳。袖を肘までまくり上げた、調理師見習いの制服を着ている。

「私に相応しい場所がどんなところか、あなたに何がわかるっていうの?」私は挑戦的に言い返した。

彼は白い歯を見せ、自信に満ちた笑顔を向けた。「いつか君を、本当の世界に連れ出してあげる。お父様が作った、その綺麗な鳥籠の外へね」

彼の名は、星野和也。自分の店を持つことを夢見る、しがない大学生の料理人。そして私は、箱庭で蝶よ花よと育てられたマフィアの頭領の一人娘。

その時の私はまだ、知らなかった。彼の言う『本当の世界』が、私たちの運命をどれほど残酷にもてあそぶことになるのかを……

バン! 大きな物音に、私は現実へと引き戻された。振り返ると、戸口に和也の側近である崇之が立っていた。非の打ちどころのないスーツ姿にサングラス、シャツの襟元からはイヤホンのコードがわずかに覗いている。その顔に表情はなかった。

半開きの窓から、駐車場の騒ぎが聞こえてきた。数人の男たちが侵入者を「処理」している。殴る音、蹴る音、そして苦痛に満ちた呻き声がはっきりと耳に届く。

「山口の犬が」崇之さんは冷たく言い放った。「死にたいらしい」

典型的な「掃除」だった。警告、骨折、そして永久追放。星野和也の名の下に、血の匂いを纏ったシマが広がっていく。

私は書類の文字から目を逸らさなかった。動揺を悟られてはいけない。なのに、心臓が肋骨を内側から叩き始める。指がこわばり、呼吸が浅くなる。喉の奥が乾ききって、引き攣れた。そうだ、薬を。震える手で引き寄せた小瓶は、しかし、からりと乾いた音を立てるだけだった。くそ、なんで。なんで、よりによって今なんだ。

(荒生先生に会わなきゃ)

荒生カウンセラーのオフィスは暖かく、外の吹雪とは対照的だった。暖炉では炎が踊り、棚に並べられた専門書や小さな観葉植物を照らしている。ここ五年、ここが私にとって唯一の安らぎの場所だった。

「ひどく疲れているようだね、絵里さん」

見上げると、荒生先生は今日は紺色のセーターを着ていた。癖のある髪はきちんと整えられ、眼鏡の奥の緑色の瞳は心配に満ちている。

「星野和也よ」差し出されたティーカップを受け取りながら、私はため息をついた。「彼に降格させられて、給料も半分にされたわ。今は地下でカビ臭い書類の整理よ」

「それは、あなたにとって非常に辛いことでしょう、再会というものは、常に複雑な感情を伴います。特に、あなたたちのような……特別な関係だったのなら」

私は頷いたが、彼の目を見ることができなかった。「薬が切れたの、直樹先生。保険がないから、新しい処方箋をもらう余裕もない。なんだか……自分がコントロールできなくなりそうで」

「今の気分はどうだい?」彼は優しく尋ねた。

「怖い、不安、それに腹が立つ……悪夢もまた見るようになったの」私の声は震えていた。「彼に会うたびに、私は……ああ、うまく説明できない。彼は今、すごく冷たくて、危険な人になった。でも同時に、昔の彼を、厨房で私に微笑みかけてくれたあの男の子を思い出してしまう」

荒生先生は身を乗り出した。「過去のトラウマと向き合うのは、常に困難なことです。特に、それが突然目の前に現れたのならなおさらだ」彼は引き出しから小さな薬瓶を取り出した。「一時的な薬なら少し分けてあげられる。でも、薬はあくまで補助的なものだと知っているだろう。君にはもっと、対処するための戦略が必要だ」

「わかってる」私は自分の指先を見つめた。「ただ……何もかもがあまりに急で。必死に築き上げてきた人生が、突然崩れ落ちてしまったみたいで」

「一緒に乗り越えよう」彼は約束してくれた。「一歩ずつだ。君がこれまでどれだけ頑張ってきたか、忘れないで」

カウンセリング室を出ると、すでに外は暗く、吹雪はさらに勢いを増していた。私はコートをきつく体に巻きつけ、マフラーで顔の半分を覆い、凍える夜の中へと歩き出した。すぐに、通りの向かいに黒いコートの男が立っているのに気づいた。隠そうともせず、じっと私を見つめている。

(見張られてる)

心臓が早鐘を打ち、歩調を速めた。三ブロック進んでから振り返って確認する――彼はまだそこにいて、一定の距離を保っている。プロの手口だ。

マンションに戻ると、通りの向かいに黒いセダンが停まっていた。窓がゆっくりと下ろされ、冷たい顔が現れる。和也だった!

(クソっ、監視までしてるの)

夜中、悪夢にうなされて目が覚めた。体は冷や汗でぐっしょり濡れている。夢の中で、私は雪の中を必死に走っていた。足元の白い地面は血のように赤く染まり、悠斗の顔が闇の中に現れては消え、彼のコロンの香りが私を包み込む……。

「ただの夢だ」と自分に言い聞かせたが、体の震えは止まらない。私は起き上がり、ベッドサイドのランプをつけて、闇に潜む恐怖を追い払おうとした。外では、月明かりがカーテンの隙間から差し込み、監視車両の影を壁に映し出している。

水を飲もうと立ち上がった時、ドアの下から紙が差し込まれているのに気がついた。拾い上げると、それは星野不動産からの通知だった。賃貸契約の更新、家賃は二倍、一週間以内に発効する、と。

「ふざけるな!」私は通知をくしゃくしゃに丸め、壁に叩きつけた。これが和也の次の手か。まず収入を断ち、次に支出を増やす。

(本当に、追い詰めてくるのね、和也)私は床に崩れ落ちた。ジーンズ越しに冷気が染み込んでくる。絶望が私を覆い尽くし、完全に溺れさせようとしていた。

(一番悲しいのは、こんなことをされても、あなたに会うとまだ少しだけ、胸がときめいてしまうことよ)

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