第9章

紗枝の視点

お母さんの口がぽかんと開き、買い物かごが地面に落ちて、中の食料品があたり一面に散らばった。香梨さんは胸を押さえ、人生最大の衝撃でも受けたかのような顔をしていた。

「お母さん……お母さん?」私は顔を真っ赤にしながらどもった。「なんで……なんでこんなところにいるの?」

「わ、私たち……」お母さんは私たちを指さし、まともな文章を組み立てられない様子だった。「あなたたち……あなたたちは……」

光代くんと私は顔を見合わせた。お互いの目に浮かぶ、どうしようもない気まずさと恥ずかしさを読み取って。まあ、私たちの必死に守ってきた秘密は、今、完全にあばかれてしまったわけだ。

香梨さんがよ...

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