第1072章

そんな中、ヒルダは手製の果実酒を取り出した。それを見たレックスは、すかさずグラスを掲げて言った。「早くくれよ、ヒル。待ちきれないぜ」

ヒルダがレックスに酒を注ぐと、ふわりと漂うその香りがジェロームの鼻をくすぐった。「それは何のお酒ですか? 私もいただいても?」彼は尋ねた。

そこで、ヒルダはジェロームにもその酒を振る舞うことにした。

彼女は俯いたままジェロームと目を合わせようとはせず、ボトルからグラスへと注がれる、澄んだ香り高い液体だけをじっと見つめていた。「これは梅酒です」とヒルダは説明した。

ジェロームは礼を言って一口含んだ。その瞬間、芳醇な香りが口の中いっぱいに広がった。なんと素晴...

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