チャプター 1075

ジスは突然の問いに戸惑いの色を見せたが、それでも懸命に記憶をたぐり寄せようとした。

「あの時、私はお前とアーノルドを連れて、助けを求めにターディ市へ向かったんだ。当時はまだ緑色の車体の列車が走っていた時代でな、駅は酷く雑然としていて、人でごった返していた。私が買い物をしようと目を離した隙に、ふと振り返ると、お前が見知らぬ女に抱きかかえられていくのが見えた」

「私はすぐに追いかけ、その女を問い詰めた」

「女が言うには、娘が病院で子供を産んだものの、その子が行方不明になってしまったらしい。それでは夫に対して申し開きができないから、娘のために代わりの子供を盗むしかなかったと言うんだ。私は女につ...

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