第1105章

ジェロームは窓辺に座り、暗く陰鬱な外の空を見つめていた。

ラウンジは照明をつけていないため暗闇に包まれている。彼の姿は窓枠に張り付いているかのようで、今にも闇に飲み込まれてしまいそうだった。

(ちっとも嬉しくない。婚約なんてしたくない。ましてやエリザベスとなんて……)

アーロの声が聞こえ、ジェロームは振り返って穏やかな笑みを浮かべた。「行きなさい。遅れるなよ」

そう言うと、彼は再び窓の外へと視線を戻し、ぼんやりと虚空を見つめた。

アーロがマイロに目配せすると、心配そうな顔をした兄弟が彼に近づいた。そこには、生気のない瞳で無表情に窓の外を見つめる父の姿があった。

マイロはためらいがち...

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