第1290章

ジーンズ・クライオバンクが顧客の遺伝子サンプルを取り違えていたというニュースがターディ中を駆け巡ると、その波紋は海外にまで及び、激しい非難の声が上がった。

多くの顧客が遺伝子サンプルの返還を求めて名乗り出る中、ハーマンは手際よく数人のスケープゴートを仕立て上げた。

ジーンズ・グループは公式謝罪を発表し、従業員のミスによる取り違えだったと説明した。その上で、顧客への補償を全面的に行い、クライオバンクを恒久的に閉鎖する意向を示した。結局のところ、バンク事業は大きな利益を上げておらず、グループの主力収益源でもなかったからだ。

事態の推移を見定めたハーマンは、その流れに乗じて調査を行うふりをした...

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