チャプター 358

テヒラはその場を立ち去りながら、ウィリアムの正体について考えを巡らせていた。

ターディ市には権力者や有力者が掃いて捨てるほどいる。上には上がいるため、誰が一番の資産家かを決めるのは難しいことだ。ここの著名人に関して言えば、テヒラもかなりの数を知っている。先ほどの男は将軍のような雰囲気を纏っていたが、それほど歳を取っているようには見えなかった。

軍関係者と接する機会はあまりないため、知らない顔も多い。だが、ターディ市最年少の将軍がキャノン家のウィリアムであることくらいは知っていた。しかし、彼のような人物が、こんな低俗なイベントに顔を出すはずがない。

かつて彼女は、キャノン家の人間とお見合い...

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