第364章

予約されていたのは、実に広々としたVIPルームだった。中に入ると大勢の人々に出迎えられたが、そのほとんどが男性だった。女性も数人いたが、どう見ても家族の一員という雰囲気ではない。その様子を見て、ヒルダは気まずさを感じ、そっとウィリアムのシャツの裾を引っ張った。

「他にも親族が来るって言ってなかった?」

ウィリアムは彼女の問いには答えず、部屋の隅を指差して言った。「ほら、あそこに君の格闘技のインストラクターがいるぞ」

確かに、そこには彼女のインストラクターがいた。カジュアルな服装に身を包み、なかなか魅力的な風貌だ。彼の姿を見つけると、ヒルダは嬉しくなって挨拶に向かった。

「おや、元カレの...

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