チャプター 412

現場の盛り上がりが最高潮に達し、誰もが二人を天にも昇る心地にさせるであろう最後のキスを固唾を呑んで見守っていたその時――。突如として拡声器から耳をつんざくようなハウリング音が響き渡り、人々は思わず耳を塞いだ。「キス! キス!」という騒がしいコールは、瞬時にして遮断された。

拡声器からは、甲高い男の声が聞こえてきた。「クレモンさん、クレモンさん、今どこにいますか?」

全員が振り返り、拡声器を手にしたギャスパーを怒りの形相で睨みつけた。

なんて無粋な奴だ! テヒラとネイサンがキスしようとしていた、まさにその瞬間に飛び出してきて水を差すなんて、どういう神経をしているんだ? 誰もがそう思った。

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