チャプター 603

寺には僧侶が二人しかおらず、建物はひどく荒廃していた。仏像さえも古びて薄汚れているありさまだ。

ネイサンは線香をあげ、心を込めて仏に祈った。現金が入った鞄を持っていたヒルダは、短い祈りを捧げた後にお布施をした。手持ちの現金をすべて寄付した後も、彼女はまだ足りないと感じたのか、QRコードをスキャンしてさらに寄付をしようとした。

人里離れた山奥にしては、随分と進んでいる。

しかし、QRコードを読み取ったものの、山の中では電波の状態が悪くインターネットに接続できず、送金することができなかった。

「あら、もう現金もないし、電波も入らないわ。これまでのようね」とヒルダは言った。

「お嬢さん、W...