チャプター 637

まさか口紅を塗り終えたその瞬間に、ネイサンがケーターを連れて現れるとは。

ヒルダは驚きと喜びを同時に感じた。「その子、連れ戻してくれたのね!」

ネイサンは素っ気なく答えた。「ああ、ウィニフレッドのところからな」

ヒルダは信じられないという顔で彼を見つめ、疑わしげに目を細めた。「メンツが大事なんじゃなかったの? どうして気が変わったわけ?」

ネイサンもまた、どうしようもない気持ちだった。(できることなら、このクソ犬を海に放り込んでやりたいところだ。だが、こいつはレックスの犬だし、ヒルダもかなり気に入っているようだ。処分するわけにもいかない)

ネイサンは真顔で答えた。「大したことじゃない...

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