第七十五章

ボーンとキングの争いは、前者の完敗という形で幕を閉じた。サハラも懲りたのか、世間の支持を取り戻そうと公益活動に力を入れ始めている。一方、ヒルダはこの夏に控えた「ポール(Pourl)」の新作発表会に向けて着々と準備を進めていた。

新作発表会では、製品そのものの魅力はもちろんのこと、イベント自体にも何か「目玉」が必要だった。人々の関心を引きつけ、ポールの注目度を一気に高めるような何かが。ボーンが一線から退いた今、国内市場はまさにポールの独壇場となりつつあるのだ。

目を引く何かが必要だと言うなら、ヒルダにはうってつけの心当たりがあった。

関連資料を手に取ると、ヒルダはマスクをつけて外に出た。

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