第929章

二秒ほど呆然と立ち尽くしていた彼女だったが、突然態度を一変させると、慌てた様子でヒルダに言った。

「やっぱりそうよね。ネイサンがそんな人なわけないもの！ 私たち、とんだ早とちりしちゃったわね、あはは……。えっと、私、ちょっと気分が悪くなってきたから、お先に失礼するわ」

そう言うや否や、彼女は自分の部下を引き連れてそそくさと逃げ出し、ヒルダ一人をこの部屋に残していった。

ヒルダは気まずそうにネイサンを見つめた。

笑ってごまかすべき？ それとも怒ったふりをするべき？ 待って！ そもそも、ここに残るか帰るかを決めるのが先じゃない？ ああ、もう！

ネイサンは突然現れた二人を見ていたが、具合が...