第931章

ネイサンはジスのことを何十年も前から知っていた。彼はボーウェン家のような連中と関わりを持つような人間ではない。ジスは海外に住んでいるが、根は温厚で学者肌の男だ。だからこそ、ボーウェン家の存在そのものを軽蔑しているに違いない。

ネイサンは複雑な表情でその琴を見つめた。この琴は、ボーウェン家と何らかの関わりがあるに違いないという予感がしたのだ。

(ボーウェン家は本当にどこにでも湧いて出るな!)

一方、ヒルダは皇宮の夜警たちが語る「鳳凰琴」の歴史に耳を傾けていた。「この琴はターディの楽器ですが、その多くは後に失われてしまいました。現代で言うハープとは、実は海外から伝わった西洋の楽器、つまりライ...

ログインして続きを読む