第963章

ジェロームは何も言わなかった。若々しく手入れの行き届いた、皺ひとつないその手はティーカップを持ち、窓の外に広がるターディ市の壮大な景色を物思いにふけりながら眺めていた。

「この件は、さらに議論が必要だな」

その夜、アーノルドは顔中を殴られ腫れあがらせたジアナを抱えて、ジェロームのもとを訪れた。到着するやいなや、ジアナはジェロームにすがりつき、泣き叫んだ。「ジェロームおじ様! 私の味方をしてください! あの野郎がコニーと私を破滅させようとしているの! おじ様、助けて! パパに殺されちゃう!」

ジェロームは、殴打され無残に腫れ上がったジアナを一瞥したが、その瞳にはかつてのような慈愛の色は微塵...

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