第3章
「嫌――私の子が!」
私は叫び、両手で腹をきつく押さえた。代わりに床に散ったガラスが背中と腕に食い込み、ずたずたに裂いていく。皮膚を越えて、もっと奥まで抉られる感覚があったのに、手だけは離さなかった。
真のブーツが肋に叩き込まれた。何かが、乾いた鋭い音を立てて折れる。
全身がびくんと硬直した。息をすることすら、意識してやらなければならなくなる。
「もっと叫べよ」
真は私の手の上に足を置き、ゆっくりと体重をかけていった。私の顔を眺めながら。目がやけに輝いている。愉しんでいるのだ。
「誰か来るって言ったよな。どこだ?」
その直後、別種の痛みが襲った――腹の奥深くから、暴力的に、内側から何かを引き剥がされるような痛み。
次の瞬間、熱いものが脚を伝って流れ落ち、下のカーペットにじわりと広がった。
血。全部、血だった。
「赤ちゃん……」私は囁いた。
「私の、赤ちゃん……」
涙が頬を伝い、そこにある血と混ざった。わかってしまう。私がいちばん大切にしてきたもの、必死に守って、待ち望んできたものが――私から離れていく。
私は二人を見上げた。残っている力を、すべて絞り出した。
「真。瑠璃」
声はかろうじて喉からこぼれた。
「私は絶対に許さない。死んでも許さない。あの人が、あなたたちの残りの人生全部を、そう願って過ごさせてやる」
真はカーペットに染み込んでいく血へちらりと目を落とした。怯えてはいない。もっと悪い――昂っていた。
「出来損ないだ。死ぬなら死ぬだろ」肩をすくめる。
「この部屋でお前を殴り殺してもな、千秋、この街の人間は誰一人口を開かねえ」
真は私の腹の上に足を上げ、見下ろした。
「もう血も出てる。だったら、最後までやっちまえ」
笑って、踏み下ろした。
ドン――!
警備用の扉が枠ごと吹き飛んだ。蹴り開けられたのではない。引き裂かれるように、もぎ取られ、部屋の中央へと叩きつけられる。
真が固まった。
粉塵がまだ落ちきらないうちに、その裂け目から一人の男が歩み入った。
黒いスーツ。微動だにしない。次に何が起きるか、もう決めている者だけが持つ、異様な静けさ。視線が部屋を横切り、私へ――私の周りに溜まる血へと落ち、彼の目の奥で何かが変わった。血の色に染まっていくような、何かが。
その背後から部下たちが雪崩れ込み、数秒であらゆる出口を塞いだ。
「お、叔父――」
真の声が、真っ二つに裂ける。
「叔父さん……宗介?」
神崎宗介。ドン。神崎ファミリーの当主。新京を一から作り上げて支配してきた男――そして真にとっては、死んだ父の弟である、実の叔父。
宗介は真を見なかった。私を見つめていた。普段は読み取れないはずの目が、揺れている。体全体が震えている。
「千秋」
それは、彼の内側から引きちぎられるように飛び出した声だった。宗介は部屋を横切り、私の傍らに膝をついた。
真はまだ、口でどうにかできると思っていたのか、宗介へとにじり寄った。
「叔父さん宗介――ちょうどいいところに。この女、他所の男の出来損ないを腹に抱えて、神崎の子だって通そうとしてやがる。だから家のために、俺が片づけ――」
宗介が振り向き、真の胸を蹴り飛ばした。
骨の砕ける音が部屋に響いた。真の身体が宙に浮き、反対側の壁へ叩きつけられ、血を吐きながらずるずると崩れ落ちた。
