第5章

足元の地面が崩れ落ちるような感覚に襲われた。「何ですって? いいえ、そんなはずない。彼女の事件を担当したのは今朝よ。来週には法廷で証言するはずだったのに」

「三時間前、彼女のアパートで遺体が発見された。警察の見立てでは、自殺らしい」

「自殺?」私は彼を見つめた。「そんな……彼女は戦う気でいた。あいつを刑務所に送るって」

「分かっている」

「じゃあ、自殺じゃないのね」

「だろうな」

目眩がした。「証言するから殺されたんだわ」

「俺もそう思う」

「それで事件は立件できない。主要証人の証言なしには、起訴は不可能よ」

「連中の思う壺、というわけだ」

雨足は強...

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