第1章
クリスタルのシャンデリアの下でシャンパンタワーがきらめき、ヴァイオリンが優雅で、そして空虚な曲を奏でている。浅草家が所有する海浜市のこの会場は、中央区の名士たちで埋め尽くされていた。政治家、CEO、一般人の乗る車より高価なデザイナーもののガウンに身を包んだ社交界の華たち。潮風が、塩の香りと金の匂いを混ぜて運んでくる。
私は人だかりの端に立ち、一口もつけていないシャンパングラスを手にしていた。指が無意識にグラスの縁をなぞる。どうしても治らない、神経質な癖だ。
ドレスは完璧だった。写真映えのする、特注のアイボリー。髪は優雅なシニヨンに結い上げられ、一筋の乱れもなくスプレーで固められている。あくまで自然に美しく見えるように、三時間もかけて準備したのだ。
スカートの裾を直し、目に見えない皺を伸ばす。顔には、五年間の結婚生活で完璧に身につけた微笑みを浮かべて。感じが良く、礼儀正しく、まったく心のこもっていない微笑みを。
二人の女性が通り過ぎていく。ひそめた声だったが、私の耳に届かないほどではなかった。
「見て、あれが狩野夫人よ」
「またお一人? 誠一郎様はどこかしら?」
「きっとスピーチの準備でしょう。あんな風に無視されて、よく耐えられるわよね」
聞こえないふりをする。五年も練習すれば、それはもう簡単だ。慣れている。一人でパーティに出席することにも、狩野誠一郎のトロフィーワイフであることにも、皆の笑いものであることにも。
でも今夜は、違うかもしれない。そう自分に言い聞かせる。誠一郎は、重大な発表があると言っていた。もしかしたら今夜こそ、彼はついに……。
ステージの照明が明るくなり、私の思考は中断された。司会者が今夜のメインスポンサーを紹介している。私は無意識に背筋を伸ばし、もう一度髪に触れた。
「皆様、狩野キャピタル創設者、狩野誠一郎氏を拍手でお迎えください!」
誠一郎が舞台袖からステージに歩み出る。ダークスーツが彼の身体に完璧にフィットしていた。その氷のように冷たい青い瞳が群衆を見渡し、私の上を一秒にも満たない時間だけ留まってから、すぐに先へと移っていく。心臓が、かすかに跳ねた。
「今夜は皆様、お集まりいただきありがとうございます。狩野キャピタルはかねてより、芸術の支援に尽力してまいりました……」
彼の声は低く、人を惹きつける力がある。会場は静まり返った。私は彼を見つめ、その言葉を待っていた。「妻に感謝したい」。他の夫たちが、こういう場で口にするように。
手のひらが汗ばんできた。シャンパングラスが滑りやすく感じる。
「この特別な夜に、私にとって最も大切な女性に感謝を述べたいと思います」
息が止まった。周りの女性たちが、ちらりと私に視線を送る。羨望の色を浮かべる者もいた。頬が熱くなる。五年。五年間、彼が公の場で私に言及してくれたのは、これが初めてだった。
「追田初穂さん、今夜の美術館の展示は、あなたの素晴らしいキュレーションなしには不可能でした。どうぞ、ステージへ」
時が、凍りついた。
深い紫色のガウンをまとった女性が、群衆の中から現れる。彼女は自信と気品に満ちた足取りで歩み寄る。私が持っていない、そのすべてを兼ね備えて。誠一郎が彼女に手を差し伸べる。彼女がその手を取る。彼が笑う。本当に笑っている。私に向けられたことのない、あたたかい笑みで。
会場中の視線が、一斉に私へと突き刺さる。
「なんてこと、本当に……」
「追田初穂って、彼の大学時代の……」
「狩野夫人がすぐそこに立っているのに、これはあまりにも……」
これが、例の重大発表。これだったのね。
シャンパングラスが、手の中で震えている。ステージのスポットライトが眩しく、隣り合って立つ誠一郎と初穂を照らし出す。二人はおとぎ話の一場面のように、完璧にお似合いだった。絵画の中の恋人たちのように。
では、私は? 私はただの、使い捨てにされた道具。
私は踵を返し、化粧室へと向かった。大理石の床に、ヒールの音が鋭く響く。一歩進むごとに、その音が私に言い聞かせる。お前はただの笑いものよ、桜井百合子、と。
化粧室には誰もいなくて、神に感謝した。洗面台の縁を掴み、鏡の中の自分を見つめる。完璧な化粧。完璧な髪。完璧な――完璧に馬鹿げた虚飾。
泣かない。パーティ会場の公衆トイレで泣いてはいけないと、とうに学んでいた。代わりに、口紅を直し、外へと歩き出した。
ビュッフェテーブルの近くで、誠一郎の母が私の行く手を阻んだ。
「百合子さん、どうしてこんな所に一人で立っているの? 誠一郎はどこ?」
狩野桂美はいつものように、まるで失敗した投資案件でも見るかのような目で私を見ている。
「スピーチをなさっています」
「スピーチなら三十分も前に終わったわよ」
彼女の鋭い視線が、私を頭のてっぺんから爪先まで検分し、値踏みし、欠陥を見つけ出す。
それから彼女は、近くの客たちにも聞こえるように声を張り上げた。「百合子さん、あなたは誠一郎と結婚してもう五年になるのよ。一体いつになったら、あなたはお腹に子供を宿すつもりなの?」
私たちの周りで、会話が止まった。誰もがこちらを見ている。私はまるで、標本の蝶のように動けなかった。
「お義母様、ここでは少し……」
「なぜ? 狩野家には跡継ぎが必要なのよ。あなたは五年も結婚していて、何一つ結果を出していない。あなたに何か問題があるのかしら? それとも……」
彼女は意味ありげに言葉を切り、誠一郎と初穂がステージで話している方へ目をやった。
「もしかして、私たちは嫁選びを間違えたのかしらね」
私の内側で、何かがぷつりと切れた。五年間の侮辱、五年間の礼儀正しさ、五年間のふり。そのすべてが、ガラガラと崩れ落ちていく。
「子供ができるほど、愛し合っていないのかもしれませんわ」
その言葉は、冷たくはっきりと口から出た。群衆の中から、息をのむ音がさざ波のように広がる。お義母様の顔が、石のように硬くなった。
私はシャンパングラスを置き、その場を離れた。
五年。五年も経って、これが私の言った初めての正直な言葉だった。
運転手は呼ばなかった。誠一郎も待たなかった。ヒールを脱いで手に持ち、海浜通りを裸足で歩く。十月の夜気は肌を刺すように冷たいけれど、ほとんど感じなかった。ドレスの裾が舗道を引きずられ、埃と汚れをまとっていく。
三ブロックほど歩いたところで、私は海浜市中央公園のベンチに座っていた。
望むと望まざるとにかかわらず、記憶が洪水のように押し寄せてくる。
私たちの結婚式の日。誠一郎は誓いの言葉の最中に、腕時計を確認していた。神父が「この女性を妻としますか」と尋ねた時、彼はまる三秒間、沈黙した。
結婚一周年。私はディナーを作り、彼が気に入っていたドレスを着た。彼からのテキストメッセージはこうだった。「会議が長引いている。待たずに寝てくれ」。私は一人で食事をした。料理は熱々から冷め、そしてゴミ箱行きになった。
二年目。三年目。四年目。同じテキストメッセージ。同じ待ち時間。同じ失望。
どのパーティでもそうだった。私がシャンパンを片手に、その場に馴染もうと必死になっている間に、彼は隅で初穂と笑い合っていた。
私はベンチに座り、海浜市の空が暗くなっていくのを見ていた。
五年。私は五年もの間、誠一郎に愛されようと努力してきた。上流社会のルールをすべて学び、彼が望むものを身に着け、彼が期待する言葉を口にし、あらゆるイベントで完璧な狩野夫人を演じてきた。
完璧でありさえすれば、いつか彼は私を見てくれるだろうと思っていた。
でも今夜、ようやくわかった。彼は一度も私を見ていなかったのだ。彼にとって、私はただの契約。取引。彼の父親の会社を倒産から救うための、一つの道具。
そして私は、私を愛したことのない男を、五年もの間愛し続けていたのだ。
夜が明け始めた頃、私は立ち上がった。ドレスは皺だらけで、化粧も崩れているけれど、頭はここ数年で初めてすっきりと冴えわたっていた。
もう十分よ、百合子。これを終わらせる時だ。
中央区にある私たちのペントハウスのドアを押し開ける。クリスタルのシャンデリアはまだ灯ったままで、だだっ広いリビングルームは空っぽだった。書斎のドアの下から光が漏れている。誠一郎は寝ていないのだ。
ノックはしない。ただ、ドアを押し開けた。
誠一郎はデスクの後ろに座っていた。三つのコンピュータースクリーンが、リアルタイムの株価データを表示している。彼は顔を上げない。「帰ったのか」
「離婚してほしいの」
彼の指がキーボードの上で、きっかり一秒間止まった。そして、まるで私が天気の話でもしたかのように、再びタイピングを始める。十秒ほど経ってから、彼はようやく顔を上げた。あの氷のような青い瞳には、何の感情も浮かんでいない。
「分かった」
「弁護士にはもう連絡したわ。書類は明日届くはずよ」
誠一郎はついにマウスから手を離した。「理由は?」
「必要かしら?」
「法的な手続きには必要だ」
私は苦々しく笑った。「『回復不能な破綻』とでも書いておけば? それとも正直に書いた方がいいかしら? 『夫が結婚期間中、ずっと別の女性を愛していたため』とでも?」
彼の顎のラインがこわばる。彼は立ち上がり、窓辺まで歩いて、私に背を向けた。
「初穂と俺はただの友人だ」
「そう。友人。だから公の場で彼女を『最も大切な女性』と呼ぶのね。だから彼女に限定版のジュエリーを買い与えるのね。だから彼女を、まるで宝物か何かのように見つめるのね」
彼は振り返り、初めてまともに私を見た。「嫉妬か?」
「目が覚めたのよ、誠一郎。ようやくね」
彼は冷たく、鋭く笑った。「俺から離れて、お前に何ができる? お前はステージに上がることさえできない。俺がお前の父親の会社を救ってやったんだ。この家は俺のものだ。お前が着ている服も、俺が買ったものだ。百合子、俺がいなければ、お前は何者でもない」
その言葉一つ一つが、ナイフのように突き刺さる。それが真実だからだ。
六年前、あのステージでの事故は、私の足首を壊しただけではなかった。私のキャリアを破壊したのだ。私はバレエ団最年少のプリンシパルダンサーで、主役だった。それがすべて、消え去った。
父の会社が倒産しかけていた。誠一郎の会社が、買収を申し出た。私が彼と結婚するという条件で。
私はそれを愛だと思っていた。彼は私の家族を助けてくれるほど、私を愛してくれているのだと。
今ならわかる。それはただのビジネスだったのだ。
