第4章
百合子視点
四ヶ月後、私たちは海浜市に戻っていた。私の足首は七割がた回復している。『フェニックス』のリハーサルを始めるには十分だ。
大悟のスタジオは千代田地区にある。地下の倉庫を改装した場所。壁という壁は鏡張りで、歩くと木の床が軋む。
私は練習着姿で、スタジオの中央に立つ。彼が再生ボタンを押す。
「頭から」
オープニングのシークエンスを踊る。一つ一つのフェッテはクリーンに。一つ一つのアラベスクは正確に。一つ一つのグラン・ジュテは教本通りに完璧に。
音楽が止まる。
「もう一度」
再び踊る。やはり完璧だ。
「やめろ」
私は振り返る。「何が問題なの? テク...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章 
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章 
縮小
拡大
