第6章
百合子視点
怯える子供をなだめるように、彼の手が優しく私の背中を撫でる。
「辛いのはわかってる」頭の上から、彼の声が降ってくる。「怖いのも、わかってる」
「でも百合子、今諦めたら、誠一郎の勝ちだ。キーボードウォリアーたちの勝ちだ。君を信じない奴ら全員の、勝ちになる」
彼は言葉を切る。
「本当に、あいつらを勝たせたいか?」
私は彼の胸に顔を埋めたまま、首を横に振った。
「なら、立て」
顔を上げる。彼の瞳がすぐそこにあった。その中には、泣き腫らした目元、崩れたメイク、すっかり打ちひしがれた私が映っている。
でも、彼の私を見る眼差しに、憐れみはなかった。
...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章 
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章 
縮小
拡大
