第129章 0129章

ローレン視点

看護師に案内されて、私たちは小さなオフィスに入った。きちんと整頓されたデスクの後ろに、中年の男性が座っている。デスクの上にはペンが数本と、何時間も前に冷めてしまったであろうコーヒーが半分ほど残ったカップが置かれていた。私たちが入室した瞬間、彼は顔を上げた。その表情は丁寧だがどこか上の空で、視線は手元の書類と私たちの間を行き来している。

「ジェームズ先生、お見えになりました」と、看護師がてきぱきとしつつもプロフェッショナルな口調で言った。

先生は彼女にさっと頷くと、その視線を私に向け、それから私の手をそっと握っているアリアへと落とした。彼の表情が少し和らぐ。そして、看護師が差...

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