チャプター 89 チャプター 089

イーサン視点

ジッポーライターの金属的なカチンという音が、リビングに響き渡った。鋭く、規則正しいその音は、俺の落ち着かない思考と同期するドラムビートのようだ。開ける。閉じる。開ける。閉じる。蓋を閉め直すまでのほんの一瞬しか炎は灯らないが、その音は静まり返った家の隅々まで満たしていく。俺の手はほとんど習慣から無意識に動いていた。脚は組んだまま、顎は重々しく手のひらに乗せられている。視線は壁の時計と玄関のドアとを行き来していた。まるで、強い意志さえあればドアをもっと早くこじ開けられるとでも言うかのように。

外から見れば、俺は落ち着いて、冷静にさえ見えたかもしれない。すべてを掌握している男、とい...

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