第102章

藤原傑はすぐに水を注ぐと、こちらへ戻ってきた。薄暗い照明がその顔立ちをいっそう際立たせ、言葉にしがたい端正さが滲む。

「……手間かけた」

立ったまま、わずかに見下ろすような目線で、

「飲め」

言い方はぶっきらぼうなのに、差し出す手つきだけが妙にやさしい。

「わ……私、自分で大丈夫です」

松原南の胸が、どくん、と跳ねた。視線まで落ち着かず、どこか慌てている。

手を伸ばす。けれど、娘を抱き続けて痛めた手首には力が入らない。受け取った瞬間、コップがぐらりと傾き——

しまった。

呆然としたまま、目の前の出来事が信じられない。

自分は、藤原傑に水を——そのままぶちまけたのか。

最...

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