第108章

和田好史から振られた仕事は、前より少しだけ骨が折れた。

「いつまでやってる?」

松原南はペン先を止め、声のしたほうへ目を上げた。

さほど明るくない照明の下、男がコーヒーを手にドア枠にもたれ、冷えた視線をこちらへ向けている。

眉をわずかに動かし、「まだ終わってないのか」とでも言いたげだった。

別荘の中は静まり返っていて、ほかの連中はもう寝てしまったらしい。

「もう片づけに入ってます。いま書斎を使いたいんですか? それとも、私がここで作業してるのが邪魔でした?」

ペンを握る指先に力が入る。彼女は顔をそむけ、壁の時計を見た。

午前一時。

藤原傑がここに現れても不思議じゃない。書斎...

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