第110章

仕事の都合で、松原南はここ数日、クルミとまともに一緒に過ごせていなかった。

拗ねられても仕方ない。そう覚悟していたのに――耳に入ってきたのは、意外な言葉だった。

「ママ、最近お仕事、疲れてない?」

遊び終えたクルミは松原南の姿を見つけるなり、ぱたぱたと駆け寄ってくる。膝にぺたりと抱きつき、大きな瞳をぱちぱちさせた。

「クルミね、さっきお爺さんとお婆さんにバーベキュー教えてもらったの! ママもあとで、クルミが焼いたの食べてみて!」

ふわり。羽毛みたいな柔らかい声が、胸の奥をくすぐる。

「いいよ」

松原南もつられて声がほどけ、目尻をやわらかく下げた。

「じゃあママ、小さな料理の神...

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