第137章

松原南は、彼女が出ていく背中を見送りながら、胸の奥に小さな引っかかりを覚えた。

けれどクルミが、皮をむいたみかんの房を口元へぐいっと押し当ててくる。南は仕方なく口を開けて受け取った。

クルミが身を乗り出す。小さな顔いっぱいに期待を浮かべて。

「ママ、甘い?」

南はもごもごと頷き、左手で娘の頭をくしゃりと撫でた。

「……甘い」

一方そのころ。

藤原奥様は病室を出て廊下を曲がり、階段室の踊り場の角で、壁にもたれてスマホを見ている藤原傑を見つけた。

足音に気づいた傑が顔を上げ、スマホをポケットへしまう。

「クルミ、入った?」

「入ったわよ。元気元気。お母さんにべったりでね」

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