第145章

江村成宏は一瞬きょとんとした。だが次の瞬間、ふっと笑い出す。

乾いて尖った笑い声。追い詰められた人間が最後に張り上げる虚勢そのものだった。

「松原南、お前……自分が大物にでもなったつもりか? あの原稿はお前が自分から俺に渡したんだろ。結婚中の財産移転だ? ふざけるな。妻なら当然のことだ!」

江村成宏の目が赤く滲む。獣じみた光――追い込まれた獣のそれ。

声をさらに荒げた。

「お前、自分が何様だと思ってる? 手が使えなくなったとき、誰が食わせてやった? 江村家がいなきゃ、お前もその連れ子もとっくに路上で野垂れ死にしてたんだぞ! 手が治ったら手のひら返しか? この恩知らずが。お前みたいな...

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