第19章

このところ、松原南は目が回るほど忙しかった。

デスクの上には、ぶ厚い書類の束がどさりと積まれている。目を凝らせば、黒い文字がびっしりだ。

――全部、取引先からの要望だった。

「手伝おうか?」

この前の同僚が通りかかり、たまらず声をかけてきた。

「こんなにあるのに、いつ終わるのよ?」

松原南は忙しい手を止めることなく顔を上げ、ふっと笑う。

「自分の仕事をしてていいよ。私、一人で大丈夫だから」

そこまで言われては引き下がるしかなかったのだろう。同僚は首を振り、水の入ったカップを手に自分の席へ戻っていった。

書類が減っていく速度は遅い。

けれど、彼女は少しも苛立っていなかった。...

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