第21章

しばらくして、松原南はようやく息を整えた。

手首に残っているのは、かすかな痛みだけ。さっきの激痛に比べれば、雨粒みたいなものだ。

ふっと息を吐き、顔を上げる。そこで初めて、隣にいる人物の顔立ちがはっきりと見えた。

「ふ……藤原若様」

松原南は口元を引きつらせるようにして、弱々しく笑った。

「またお礼を言わなきゃ。助けてくださって、本当に……。藤原若様がいなかったら、どうしたらいいか分かりませんでした」

外野の噂なんて、やっぱり当てにならない。

藤原若様は何度も彼女を助けてくれた。冷たいだの何だの、他人が勝手に言い立てるような人には見えない。

ただ——。

この恩を、どう返せば...

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