第44章
松原南は、少し意外に思った。
藤原様を直接目にしたことはこれまでなかったものの、この数日、報道では嫌というほど見ている。
世間からすれば、あの人はいつだって笑みひとつ見せない、近寄りがたい人間のはずだった。
それなのに今は、たったひとつの呼び方のせいで、もともとやつれて青白かった顔色にまで、うっすら血の気が戻って見える。
クルミは昔から、人懐っこさの塊みたいな子だ。
お婆さんとすっかり打ち解けたせいか、ついでにベッドにいるお爺さんのことまで怖がらない。松原南がいいと許すと、病床のそばにまでちょこちょこと寄っていった。
にこっと甘い笑みを浮かべ、クルミが言う。
「お爺さん、りんご...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
61. 第61章
62. 第62章
63. 第63章
64. 第64章
65. 第65章
66. 第66章
縮小
拡大
