第66章

空気が、どこかおかしくなった。

槇村郁はぱちりと瞬きをし、妙に手際よく立ち上がると、「俺、傑の幼なじみなんです。この病院で働いてて、ちょうど見かけたから顔出しただけで。あ、槇村郁って言います。あなたは?」と名乗った。

相手が女性だからといって、見下すような素振りは一切ない。口調もきちんと敬意が混じっている。

それが、妙に心地よかった。

松原南はこわばっていた眉をほどき、顔を上げる。

目の前の男は整った顔立ちで、藤原傑とはまるで系統が違う。

どちらかといえば、学生時代にいた、やたら明るい小さな太陽みたいなタイプだ。

「松原南……それが私の名前です」

一通り観察すると視線を引き、...

ログインして続きを読む