第68章

「やっと思い出したのね。あたしっていう親友がいること」

玄関に足を踏み入れた途端、北野紫苑の恨みがましい声が松原南の耳に飛び込んできた。

南はくすっと笑い、顔を上げる。

「昨日も電話したじゃない。なんで『今さら思い出した』扱いになるのよ」

スリッパに履き替え、紫苑のいるソファの隣へ腰を下ろす。

「書類取りに戻っただけなのに。今日帰ってくるって、どうして分かったの?」

横の親友に眉をつり上げ、問い詰めるみたいな顔を作る。

「ちょうど帰ろうとしてたらさ、あんたが高そうな車から降りてくるのが見えたの。だから待ってみただけ」

紫苑はあっけらかんと言い、まるで悪びれない。

「で? 最...

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