第73章

「……はい。検討してみます、先生」

松原南はしばらく黙り込み、それから静かに言った。

「考えがまとまったら、お返事します。最近は何かとお世話になりました」

胸の内は、ぐちゃぐちゃだった。

手が治る可能性がある。それ自体は、素直にうれしい。

けれど――。

今の自分の立場で、イタリアの、あんな有名な医師にどうやって辿り着けばいい?

まさか……また藤原傑に頭を下げるのか。

ようやく距離を置こう、と決めたばかりなのに。

なのに、こんなことが起きるなんて。

頭の中は、絡まりきった毛糸玉みたいで、どう引っ張ってもほどけない。

松原南は小さく息を吐き、いったん考えるのをやめた。

…...

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