第76章

松原南は他人の視線など気にも留めていなかった。だが原田凛だけは、自分の頬を思いきり張り倒されたみたいな気分だった。

奥歯を噛みしめ、手だけを必死に動かす。額からは、じわりと汗が伝って落ちた。

どうして思いつかなかった。

くそっ……肝心なところで、よりにもよって!

時間は一滴ずつ削れていく。松原南の忍耐も、そろそろ限界に近づいていた。

「原田凛。私に勝つって言ってたよね?」

彼女は脇に置かれたデザイン画を指さし、口元に嘲るような笑みを浮かべる。

「丁寧に仕上げたいって言うなら、今すぐ諦めたほうがいいよ。みんなの時間の節約になるし」

普段オフィスで見かける彼女は、いつだって淡々と...

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