第78章

松原南が腹を決めた、その翌日。別の出来事が起きた。

「えっ……あれ、藤原傑の娘かもしれないって噂の、あの子じゃないか?」

白衣姿の槇村郁は、オフィスへ戻ろうとしていた足をふと止めた。

「まだここにいるのか。退院してない?」

あの少女が入院している――そんな話は、たしかに耳にしていた。だが、それもずいぶん前のことだ。まさか今も病院にいるとは。

槇村郁は瞬きをひとつ。目の奥に、含みのある光が走る。

(ちょうどいい)

彼はずっと、二人の鑑定に使えるサンプルを手に入れる機会を探していたのだ。こんな好機、逃すわけがない。

槇村郁は行動が早い。思いついたら即、動く。

手にしたカルテ類を...

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