第80章

場の空気がすっと静まり返った、そのときだった。

チリン、と澄んだ着信音が不意に鳴り、全員の視線がそちらへ吸い寄せられる。

――藤原傑のスマホからだ。

男は眉間にわずかに皺を寄せ、瞳の奥をかすめた苛立ちを隠しもしない。

通話を取ると、向こうから聞き慣れた声が飛び込んできた。

「藤原君、今どこ? 時間あるなら、ちょっと来て確認してほしい。急ぎの用があるんだ」

槇村郁だ。焦っているのが声の端々から伝わってくる。スマホの通話音量がやや大きく、隣に立つ松原南にも内容が筒抜けだった。

急ぎの用……?

南はまつげを震わせ、思考が勝手に跳ねる。

槇村郁は医者だったはず。藤原傑を呼び出すとな...

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